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概要

月刊ぷらざ 2018年6月号

あつらえる?妥協のない職人技が生みだすオーダースーツこの人に聞きたいあなたの周りの「輝く人」を教えてください!! 巻末のアンケートハガキに記入の上、お送り下さい。 大正10年創業、今年で98年を迎えるという『岸洋服店』。2代目店主の岸さんは84歳、「100年までは頑張らんと」と、今も現役でオーダースーツを作っている。 上野丘高校を卒業後、進学を目指していたが、入試直前にお父様が倒れられたことをきっかけに、東京洋服学校へ進む。「今でいう専門学校ですよ。東京で誰にも負けない裁断を学びました」。 店内の棚には生地が並べられている。「馴染みのお客さんばかりだから、好みは全部わかっています。顔映えする生地や好みにあったものを一緒に選んでいます」と、オーダースーツの醍醐味とも言える生地選びから始まる。 生地がみつかれば、次は採寸。「どうやって…」と質問するとすぐにメジャーを手にして採寸が始まった。慣れた手つきでメジャーが動く。店主が読み上げる数字を、そばで奥様がさっと書き留める。ずっとこうやってこられたのだろう…言葉がなくても、お互いの動きをわかりあって仕事が進む。「採寸で大切なのがアーム。肩回りが合わないと腕の上げ下ろしが窮屈だったり、肩が張ったり、着心地が悪くなってしまう。首入りも浮いたりせずにピッタリに仕上がる。オーダーだからこそお客様の体形に合わせることができるんです」。 採寸の後は型紙作り。これまで岸さんが作られたスーツの型紙が残されていた。「これは私の歴史だから。中にはもう亡くなられた人もいるけど、大切な宝物です」と、引き出しにぎっしりと詰まった型紙を見せてくださった。型紙がオーダースーツの要。着心地、美しいフォルム、お客様の好みを満たす型紙作りは、長年培われた技術と、いかに着心地の良い、長く愛されるスーツを作るかという岸さんの熱意が合わさった賜物。「お客様の思いをくみ取るというか…感じることですね。あとはそれをどう表現するかなんです。寝ていてもアイデアが浮かんだら何時でも型紙に向かいます」と、仕事場にベッドがあるのもうなずける。 型紙ができあがったらそれを生地にあて裁断が始まる。チャコペンを使って、すっすっとリズム感よく印がつけられ、そこにハサミがザクザクと入って、生地が切り取られていく。「どれも昔から使っている道具。使い勝手がよくて…道具も私の癖をわかってくれていると思うよ」と優しい笑顔がとても印象的。 仮縫いを行い、試着。「似合うだろうか。気に入ってもらえるだろうか。」作り手が一番わくわくする瞬間なのだとか。ここで微調整を行って、本縫いとなる。「本縫いは信頼できる人にしか頼めない!」と、神戸在住の足立さんに委託している。「イギリスで修業を積んで、コンテストで何度も優秀な成績を修める日本有数の職人さん。この方だったら大切なお客様のスーツをお任せできると思いました。出会えた時は本当に嬉しかったですね」と、最後まで手抜きなしの職人の真剣な眼差しにドキッと心動かされた。 本縫いを終えた世界に一着のスーツが岸さんのもとに届く。それをお客様に手渡す時の笑顔が、これまでこの仕事を続けてこられた原動力だとか。既製品では味わえない〝あつらえ?だからこその着心地、愛情を感じる温かみ、一生物としての宝物。100年と言わずまだまだオーダースーツの良さを伝え続けてほしい。【取材協力】岸洋服店 所>都町1-2-3 (097)532-2310現在84歳の岸洋服店 店主の岸忠夫さん。都町入口にある4階建てビルの2階に店を構える、昔ながらの紳士服店。これまで手掛けたオーダースーツは数えきれないほどだとか。テーラー 岸 忠夫さん!色、質、手触り…様々なスーツの生地が並べられている。「御贔屓さんの好みは全部わかっているから、生地選びはそんなに大変じゃないですよ」。この道66年の貫禄を感じる。←慣れた手つきでメジャーとベルトを使って採寸が始まる。読み上げられる数字を奥様が書き留める、お二人の息の合った作業に見入ってしまう。↑長年使い込まれた愛着のある道具で、オーダースーツが作られていく。すっすっと線を引く音、ザクザクとハサミを入れる音…作業の音が心地よく響き渡る。13