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概要

月刊ぷらざ 2018年9月号

認知症と診断されたら~症状と治療、予防について~認知症は脳の機能が広範囲に失われる病気であり、アルツハイマー病に代表されます。ヒトがどのようにして認知症になるのか、どのような危険因子が認知症に結びつくのか、どのようにして認知症を予防することができるのか、かなりの科学的根拠が蓄積されてきました。中年期の高血圧症・脂質異常症・糖尿病の治療が非常に重要です。安部 芳武 先生   生活習慣病・脳内科あべクリニック所>大字森402-5a(097)578-6311ebrain-abe-clinic.org信州大学医学部医学科卒業医学博士大分大学医学部神経内科学講座 客員研究員認知症予防専門医書店で「毎日○○をすれば認知症にならない」という本を見つけました。読むべきですか?参考程度に留めるべきです。我々は言論・出版の自由が保障された社会に生きているのであって、本の著者は自由に自分の考えを表現・出版できます。従って「本に書かれているからその内容が科学的に正しい」などという推定は働きません。書籍の内容が科学的根拠をもっているのかどうかを判断できない人については、むしろ読まない方が良いとまで言えます。本稿では科学的根拠が確立された内容をお答えしていくこととします。「認知症」ではどんな症状が出ますか?認知症は「一度正常に獲得した脳の機能が、広範囲に失われる状態」と言えます。ただし「認知症」という言葉は総称です。「果物」という総称から形が想起できないように、「認知症」という総称からは症状を定義できません。具体的な疾患名について考えていく必要があります。では、最も多いタイプの認知症と、その症状を教えて下さい。「アルツハイマー型認知症」です。初めに起こる症状としては「記憶の障害」が多く、新しいことを覚えるのが苦手になります。このため聞いたことや言ったことをすぐ忘れてしまい、同じことを何度も繰り返して言うようになります。その記憶の障害はいわゆる「歳のせい」とは異なるのですか?確かにヒトは誰しも歳を取ると新しいことを覚えるのが難しくなります。この加齢現象を「健康なもの忘れ」=「健忘」と呼びます。一方、アルツハイマー型認知症で見られる記憶障害は「エピソード記憶の障害」と呼ばれ、「当然思い出せるはずの出来事をヒントを与えられても思い出せない」状態のことを言います。具体例では、「昨日の晩御飯を食べたか思い出せない。一家で中華料理店に行ったことを指摘されても思い出せない。」といったものが挙げられます。記憶障害の他に、アルツハイマー型認知症を考える上で大事な症状はありますか?考えていることを言葉にしたり、言われたことを理解したりすることが困難になる言語障害が挙げられます。計算障害が見られる頻度も高いです。他に、視空間認知障害が大切です。これは視力が正常であるにも関わらず多くの認知症については、根本的な治療法が現在のところ存在しないということですね。では、予防は可能ですか?「○○すれば認知症になりにくい」といった科学的根拠はかなり蓄積されてきました。これらの科学的根拠は「高血圧症の治療をする集団と放置する集団のアルツハイマー型認知症の発症率を比較した」といった形の疫学研究の結果であり、説得力の強いものです。結果として、認知症予防のために修正可能な危険因子としては、高血圧症と脂質異常症(コレステロールの異常)・糖尿病・肥満症・喫煙・運動不足が挙げられます。糖尿病の放置は認知症発症の発生率(ハザード比)を2.1に上げます。喫煙習慣は認知症発症の発生率(相対危険度)を1.3に上げ、肥満症は1・41に上げます。逆に高血圧治療は認知症発症の相対危険度を0・87に下げ、脂質異常症治療はこれを0.7程度に下げます。有酸素運動の習慣導入は認知症発症の相対危険度を0.6に下げます。また、これらの危険因子の関与は中年期において最大化されます。結論として、認知症の予防としては、「40歳を超えたら高血圧・脂質異常症・糖尿病を早期発見、治療する。喫煙はしない。有酸素運動を行う習慣を取り入れる。暴飲暴食を控えて肥満にならないようにする」ということになります。顔や物の判別が難しくなる状態です。2番目に多いタイプの認知症とその症状を教えて下さい。レビー小体型認知症です。認知機能の低下の他に、いないはずの人が見えたりする幻視と言われる症状が見られるのが特徴的です。また、この病気には身体症状が伴うのが特徴です。筋肉が固くなって動作が遅くなるパーキンソニズムがみられます。他にも認知症のタイプがありますか?脳血管障害の後遺症としてみられる脳血管性認知症が挙げられます。脳の細胞が徐々に減っていく病気としては、前頭側頭葉変性症、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核症候群などが挙げられますが、頻度は少ないものです。認知症の治療にはどのようなものがありますか?外科手術やホルモン・ビタミン補充療法で完全に治り得る認知症についてはこれらの治療を行います。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症については、脳内で減ってしまう物質を補う治療が主役となります。これにより、発症前と同じように生活して頂くことを目指します。脳血管性認知症自体には有効な治療法がありません。血管障害の再発を予防する治療が行われます。A Q A Q A QA Q A QA QA Q A Q A Q58