「α9000」で第2のカメラマン人生をスタートさせた私であったが、6年を経ても写真技術は一向に向上せず、無為なカメラマン人生を送っていた。仕事柄プロのカメラマンさんとの交流も多く、元来研究熱心な私は、いろいろなことを貪欲に学び取ろうとする姿勢だけは大いに発揮しつつも、なかなか結果を残せずにいた。それでも努力の結果、実績は伴わずとも、一端に知識だけは蓄積していき、加えて、元来備わっている印刷の知識が融合し、次第に「口だけ達者なカメラマン」が出来上がりつつあった。これは、印刷・出版業界の末席を汚す私としては、時に商売上、この上もないメリットを生むことがあった。「手振れ」や「露出」、「被写界深度」もこの頃学んだ。知識が増えると、さすがに撮れる写真も微妙に以前とは変わっていった。少しはましな写真が撮れる確率も微妙に上がり、経済的にも随分助かった。当時はまだデジカメは一般的ではなく、当然私もフィルムを使っていたので、確率が上がったことでフィルム代も現像代もぐんと節約できるようになった。それにも増して私を喜ばせたのは、カメラマンさんに支払う撮影代の節約が可能になったことであった。当時、印刷物を制作する際に必要な写真は、クライアント様から支給される以外は、必ずプロのカメラマンさんにお願いしていた。この費用が半端ではなく、時に撮影代、ン十万円、印刷代、8万円なんてこともあり、まるでカメラマンさんのために営業しているようだと揶揄されることも度々であった。そこで、この現状を打破するために私は決心した。「自分で撮ろう」と。人物や動き物はさすがに無理があるので、端から除外した。さらに、ライティングが必要と思われる物は、機材もノウハウもないのでパスした。マクロレンズは持ってないので、その類もNO。つまり「自然光で撮れる静止物」に限定した。ありがたいことに、その頃私が扱う物件のうち9割近くはこの範疇に属した。これまで、1点2~3万円も要していた撮影代が、1点に対し仮に36枚撮りフィルム1本費やしたとしても、現像代込みで1,500円で収まるようになった。フィルム1本で製品2点撮れれば、1点あたり750円。3点撮れれば、1点当たり500円であった。これは画期的出来事であった。しかも大抵の場合、カメラマンさんからは、撮影料+出張費まで請求されていたので、この差は想像を絶するものであった。「写真を5点程ものにすれば、レンズ1本タダ」くらいの勢いで、私の機材への投資欲は徐々に高まり、やがて終わりのないレンズ沼、ボディ沼へと身を沈めていくことなど、この時の私は知る由もなかった。(つづく)
本日の教訓:皆さん、手振れ防止には三脚を使いましょう。特に静止物には効果絶大。知らず知らずのうちに、フレーミングも慎重になります。